アトピーではなく「過去」があなたを縛っている

トンネル コラム
あなたがそれを「影」だと認識できるのは「光」を知っているからです。この世界が「光」だけだと「影」もなければ「光」さえなくなる。光だけ、影だけ存在することはできない。あらゆる状態には必ず2つの対立が内包されている。「影」だけを「光」だけを見ることはできない。

アトピーは薬を塗れば治ると思っていた。

大人になれば肌は綺麗になると思っていた。

しかし身体の中から湧き上がるような痒みから解放されなかった。

さらに、13歳から発症したアトピーは3度目の悪化に直面してしまった。

症状は痒みだけでなく、胸の動悸が常に激しくなるようになった。ずっと身体が気だるくてだるい。

真っ赤に腫れた顔をさらして仕事をした。周りからの目線が恥ずかしかった。

しかし深夜まで痒みで寝れず疲れ果てて、ほどなくして会社を退社、失業してしまった。

失意で悔しい思いをしながらこれまでの闘病を家の中で思い出していた。

「ステロイドを塗れば?」「皮膚科行ってるのか?」と周りから軽くいわれる。

しかし、何をやっても地獄のような痒みの苦しさは解消しなかった。

これ以上、なにを頑張ればいいのだろうか? いくら熱心に取り組んでも努力は報われなかった。

ついに仕事まで奪われ、家に引きこもることで、ストレスはなくなった。だけど、痒くて痒くて夜眠れない。乾き切った肌を布団の中で抱えながら人生を悔やんだ。

アトピーという病気は不思議だ。努力を重ねても報われるとは限らない。

治そうと思えば思うほど、もがけばもがくほど治らなかった。

カーペットからハウスダストを、アレルゲンを食事から除去しても再発を繰り返した。

何かをやめても、何かをやってみてもアトピーは悪化した。

そういう内なる苦しみとは裏腹に他人からの目線は厳しかった。

「ステロイド塗らないからダメなんだよ」

「ステロイドが嫌だって? わがままだな」

「もっと苦しんでるやつがいるぞ」

そして、「うつさないでね」こんな女子からいわれた言葉が耳の奥で響く。

この病気は隠さなければいけないのか?

だったら、もう気にしないで欲しいと思う。

もう、私を見ないでほしい。注意を払わないでほしい。

しかし、今度は孤独が口を開けて待っていた。

誰にも理解されない寂しい心を抱えながら生きる。

そんな20年間だった。

私の話はこれくらいにしよう。

私は日々、アトピーで悩む方々にお会いしていますが、このような意見を耳にすることがあります。

「アトピーといわれた時、目の前が真っ暗になりました」

「自分の子がアトピーだけにはなって欲しくなかった」

「克服するには時間がかかる難病だ」

この言葉に見え隠れしているのがアトピーになれば「もう終わりだ」という認識なのでしょう。

そうであるならば、自分のアトピーに引け目を感じて「どうせわかってもらえないよ」と、ますます心を閉ざしてしまう‐かつての私のように。

「アトピーは難しい」とわたしにいわれた方に、なぜそう思えますか? とお尋ねすると「いや、だって今までがそうだったから」と答えてくださった方がおられました。

過去の辛いアトピーの体験から「アトピーは難しい」と信じているのならば、それは過去があなたを縛っているといえるでしょう。

過去が現在を規定するのならば、今日は昨日の続きだし、明日も昨日だし、あさっては永遠に来なくなる。

過去に身に着けた「考え」「知識」に自己を同一化して頑張れば頑張るほど「過去」は色濃くなるだろう。

ますます「現在」「未来」は過去に侵食されるだろう。

そうなれば、現状の自分を抜け出すことが不安になる。

慣れ親しんだ棲みかから、新しい地に旅立つのが億劫になり不安を覚えるかのように。

さすれば、現状維持が目的となり、対処療法(その場しのぎの対策)ばかりやることになる。

現状維持=肌をコントロールすることばかりやってしまう。

それはなぜだろう。

アトピーをずっと抱えていると、健康になることすらも大きな変化に思える。

だから「病気から健康へ」という変化を避けてしまうことになる。

ゆえに現状維持のための対処療法(その場しのぎ)ばかり手を付けてしまう。

そして「アトピーは難しい」という考え方を強く信じてしまう。

でも、今まで散々「アトピーは難しい」って思わされる体験をしてきたのだから、きっとこれからも難しいと思えてしまうのも確かでしょう。

その確かさの裏付けは因果関係への信仰。因果関係を信じていたら、ずっと「アトピーは難しい」となる。

「こうなれば、こうなります」と、因果関係を信じるならば、人は変わることができない。

過去からずっとわたしってこうだった! だからきっと未来も同じなんだわ。

ならば人は変化できない。

そして、治らないだろう。変化なきところに治癒はもたらされないから。

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