アトピーと罪悪感が結びつくとき

「責任」なきところに罪悪感は生まれない

アトピーであることに罪悪感をもつ方は少なくありません。

かつて私が無料の電話相談を行っていたとき、若い方からこんな胸のうちを聴くことができました。

「親にアトピーであることが言えない」

「親に自分のアトピーのことで、お金を使わしてしまうのがつらい」

すなわちアトピーであることに罪悪感を抱えてしまうというのです。

では罪悪感とはどういうことでしょう。

自分がやってしまった言動によって明らかに相手の人を傷つけたり迷惑をかけてしまった。それにたいして責任を感じ「私は悪いことをしてしまった」と考える。そうやって自分の良心に従ってそう思う―罪悪感をもつに至るのです。

つまり罪悪感とは必要な場合があるわけです。

もし罪悪感がまったくなければ、その人は他者に迷惑を掛けたにも関わらず、まったく反省しないわけです。よって今後、同じような迷惑をやってしまうでしょう。

自分がやった行為、あるいは発言によって「相手に悪いことをしてしまった。これからは気をつけたい」と反省するのは人として身に着けるべき態度です。なので罪悪感はあってもいいのです。

ここでわかるのは責任があるところでしか罪悪感は成り立たないということです。

自分の言動によって相手に迷惑を掛けてしまった。「この責任は自分自身にある」と感じた時、人は悪感をもちます。

どんなときに自分は責任をもつべきか。責任のある、なしについて識別ができないならば罪悪感を感じやすくなります。

そして必要以上に思い悩んでしまうでしょう。

アトピーと罪悪感を橋渡しするのは「責任」なのです。

では私自身がアトピーであることで、親が治療費等でお金を使った場合、そのお金の支出に責任があるのでしょうか。

親にお金を使わせたことは私のアトピーが原因だから、出費については責任を負うべきだと考えるならば、私は罪悪感をもつことになります。

いくら親が「気にしなくてもいいよ」と言ってくれたとしても、どんなことについても責任を感じてしまう人ほど気にしてしまう―罪悪感をもってしまうでしょう。

あるいは私がアトピーでしんどくなり働けなくなったとしましょう。

体調が悪化した理由で会社を休むことにしました。

昨今のことですから会社はとても忙しいため、長く休むのは難しい状況であることは理解できます。なので休むことに気がひけることでしょう。

同僚に負担をかけてしまうだろう。上司にも心配をかけてしまう。

私は会社からずいぶん期待されていた。お世話になってきた。

それだけに、ここで進行中のプロジェクトから抜けるのは、なんとも申し訳ない気分になる。

具体的に私が抜けることで忙しい上司には負担をかけてしまう。同僚にも残業をさせてしまうだろう。

みんなしんどいのに、私だけ休んでもいいのだろうか。

というぐあいに私自身が休むことで会社の負担が重くなることに責任を感じる。

そういうふうに想いをめぐらしていくうちに罪悪感を抱えることになるかもしれません。

このように自分の行為が及ぶどこまでの範囲までに責任を取るべきなのか。

自分の負うべき責任の範囲が曖昧ならば罪悪感を覚えやすくなります。そして思い悩むことも増えるでしょう。

本来なら相手が取るべき責任かも知れません。

それは明らかに相手に責任があっても、それを我がものとして感じるのでしたら持たなくてもよい罪悪感をもってしまいます。

「責任がある・ない」の境界線

どんなことに責任を負うべきなのか。あるいは負わなくてもいいのか。

その境界線がそもそも無い場合が多いです。またあいまいなケースもあります。

罪悪感をもちやすいと思われるならばご自身のなかで「責任がある・ない」の境界が無い、あるいは曖昧であることに気づかれていない可能性があります。

いちど責任のありかたについて考えて見られることをお薦めします。

くりかえしますが責任がないところに罪悪感は成立しないのですから。

ひょっとして責任をもたなくてもいいことに負い目を感じているかも知れません。

罪悪感が悪いのではありません

罪悪感が問題ではありません。もちろんアトピーが問題でもありません。

責任をもつ必要がないにも関わらず「アトピーになったことで周囲に迷惑をかけた。そしてその責任は自分にある」という考えを信じこんでいることに問題があるのです。

病はいつなるかわかりません。そして誰もが体験することです。

それでも病気になり世話をかけたことに罪悪感を感じるのは、なぜでしょう?

自分の役割と立場に強い責任感と使命感をもっていたら、病気になったことでそれらが果たせなくなり、申し訳なく想うでしょう。

不甲斐なさを感じるでしょう。役目から離れたことで孤独を感じるでしょう。

そういった想いが誰にも受け止められない時、行き場のない想いは自分に向けられます。これが罪悪感につながります。自分で自分を責め始めるのです。

罪悪感はつくられます

罪悪感はつくられます。あなたは責任を果たしていないと問われると、どうしても罪悪を感じやすくなるからです。

それは直接的ではなくても間接的に遠回しに言われても、です。

たとえば、親が子どもに夫婦関係の悪さを伝えて「お母さんはつらいの」と言ったとしましょう。

子どもは自分のせいでお母さんはつらくなったのだと思いがちです。

この場合、お母さんは子どもに夫婦間のコミュニケーションについての責任を子どもと分かち合いたいという意図があります。

あるいは「あなたは家を出ていって幸せになるのね。お母さんを置いていくのね」といった場合、あきらかにお母さんは自分の人生の責任を子どもに押し付けています。

私が不幸になるのはあなたの行為のせいだと伝えているわけです。

ここで「お母さんを悲しませてはいけない」「寂しくさせた私は悪いのではないか?」と考えると、子どもは罪悪感をもちます。

こうして相手に自身の損害を伝えて、その責任を感じさせることで罪悪感がつくられるのです。

病気で会社を休むことで、会社側に負担をつくってしまうかも知れません。

あからさまに「あなたが会社を休むのは困ったことだ」と言われるかもしれません。

しかしながら病気になりたくてなったわけではありません

いつ病気になるかわかりません。いくら治療に努力しても回復できないことは珍しくありません。

とりわけアトピーは薬を使用しても、なかなかおさまらないケースの方が多いです。

会社を休むことで上司や同僚に負担をかけるかも知れません。

だからといってすべての責任を負う必要はあるのでしょうか。

ましてや病気になったことで、自責の念にかられるなんて適切なことでしょうか?

相手にアトピーについての理解を求めて、誠意をもって事情を伝えれば分かってもらえるはずです。

いったん休んで、ゆっくり静養をしてから仕事に復帰すればいいのです。

文責/特定非営利活動法人 日本成人病予防協会会員 健康管理士 渡辺勲