アトピー患者の精神的悩みを医師は聴くべきだという記事に寄せて

「あなたの話は長くて理屈ぽいから、もうやめてくれ。と皮膚科でいわれたのです」

これはある方が私に聞かせてくれた話です。

そしてほどなくして、私は「皮膚科での診察時間が2分も満たない」という嘆きの記事をネットで見つけたのです。

「アトピー性皮膚炎の平均診察時間が2分以下という深刻度」
悩みを伝えられない患者が多いのは医者に問題あり

アトピー性皮膚炎の平均診察時間が2分以下という深刻度 ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主な病変とするアトピー性皮膚炎。厚生労働省の2014年患者調査によると患者数は45万6000人で、2番目に多い皮膚疾患とされる。昨今は生物学的製剤の開発が...

この記事を引用させて頂きながら私の意見を書きます。

「ラーメンも食べられない時間ですよ」。日本医科大学千葉北総病院皮膚科の幸野健教授は、アトピー性皮膚炎患者の31・3%が、平均診療時間が2分以下にとどまっているとの調査結果を嘆く。

私が幼い頃、若松さんとこに行っていたのを思い出す。京阪関目駅近くの内科だ。

今でも覚えているけど、入念に胸や背中に聴診器を当てられて、金属の冷たい感覚さえも記憶にある。

ベッドに寝かされて、触診をじっくり受ける。

皮膚科には中学1年生の頃に行った。先生から何かされたこと、まったく覚えていない。

ただただ、早く薬を塗りたかった。

アトピーは東洋医学系のクリニックにもよく通った。そういえば、どこも診察に時間はかからなかった。

でも、あるクリニックだけは脈診、舌診があった。これは5秒くらいじゃないか。そして、先生が別室にいるスタッフに漢方薬の名前を告げる。そして、終わりだった。

待ち時間と薬をもらうまでの時間の方が長かった。

アトピーの場合、西洋、東洋医学とわず、どこも診察時間は短かった。

だけど、私はその診察時間が短いことに疑問もなかった。また、もっと見てほしいとも思わなかった。

だって、アトピーは薬を塗ること、飲むことしかやるべきことがないからだ。

漢方薬も飲んでいた。漢方薬がどんな効果効能があることも説明してもらったことはないし、知りたいとも思わなかった。なぜだろう。

症状に伴う精神的な悩みを医師に伝えているかについても調べており、その割合は約38%だった。特に、恋愛・結婚への不安や、自分に自信が持てないといった悩みは伝えられていない例が多かったという。

 

「診療は限られた時間だが、医師はその中でメンタル面のサポートも積極的に行っていく必要がある」(幸野教授)。

精神的な悩みを伝えている割合が意外に多いと思った。けれど、「精神的な悩みを医師に伝えている」ことの、どこまでの深さまで伝えているか、この記事では伺うことはできない。

この国にでは他人に、この記事にある恋愛・結婚への不安や自信が持てないといった悩みを打ち明ける文化がない。よほどの胸襟を開き合った親友でないと深い悩みを話すことはしない。

いくら医師でも無理ではないか。ましてや、薬を塗って早く治ればいいのだ、と考える患者が多いと思う。みんな焦っているし。

また、ふだんから自分の心を感じたりする習慣がなければ、自分が何に深く悩んでいるかを掴むことができない。よって、医師に伝えることもできない。伝え方も普段からやらないのでわからないし、そもそも何を伝えればいいかもわからないだろう。

そして、伝えたところで何にもならないという、やるせなさ、諦観については確信がある。絶対にそうだ。ただ、薬を塗って治ればいいんだって、そう固く願っている。

精神的な悩みを打ち明けたいよりも、「なぜ治らないのか」「なにが原因なのか」「いつになれば治るのか」このことを一番に知りたいし、聞きたいのではないだろうか?

まず、この質問に回答してもらって、納得できれば、患者たちはゆっくりと医師に辛い胸の内を話し始めるのではないだろうか。

アトピーは薬物治療が中心だ。

医師から触診や舌診をなされることはない。自宅での治療がメインだから診療時間が短いのも無理はない。

そこで、精神的なフォローが必要だと記事で主張されているが、「がんばりましょうね」「辛いのはあなただけでないから」「受け入れましょうね」「辛いことばかりじゃないでしょ」「気長に取り組みましょう」と、いわれても慰めにもならない。

人の心の扉は外からは開けることはできない。心はうちら側からでないと開かない。だから、患者に悩みを打ち明けてほしいとの要請は何人もできない。

患者側に希望がない限り、皮膚科は肌を治す機関であることは、これからも変わらないだろう。