「薬物治療でだめならアトピーを和食で治せないだろうか」と医療に不信を抱いた方が行きつく先は食べ物です。
しかしながら、精進料理のような和食にしてもアトピーが治らないと嘆く人が目立ちます。
アトピーが重篤な場合、ある程度は食事に気をつける必要はあります。
しかし、それでも和食「だけ」でアトピーをすっきり完治までに至らないのが実情です。(あくまでも和食「だけ」ですよ)
和食に病を治す力はない。これが私の結論です。
なぜ、そこまで言い切れるのか? これからお話していきましょう。
そもそも、和食とは何か?
まず、病気治しにおける和食とはなんでしょうか?
アトピーやガンであれば乳がんや大腸がんなど、今まで日本になかった欧米型の病気が急増したのは欧米型の食事に切り替わったからだという説があります。
ゆえに、和食は食の欧米化が急速に広まった昭和30年代以前の日本の食卓にのぼっていた食事内容と規定できるでしょう。
すると、和食を貫くとどうなるでしょうか?
油脂を含んだマヨネーズ・ソース・ドレッシング、そして乳製品や洋菓子は食べてはいけません。和食にこれらの食品はなかったのですから。
また、肉も鶏卵も週に1回程度しか食べることはできないのではないでしょうか? 昭和30年代以前は安価な輸入産品・穀物・飼料が出回っていません。ゆえに高くて毎日、食べることができなかったからです。
さらに当時の野菜は無農薬が当然です。輸入産品によるポストハーベストや食品添加物は皆無でした。
そして、当時の日本人は現代よりもずっと早く就寝していました。零時までには寝ましょう。
そして、できれば「きれいな水」で炊事する必要があるでしょう。
もう、ここで悲鳴が聞こえてきそうです。和食を実践するのは極めて困難なのです。
和食に病を治す力があるのか?
食事で病を癒す理論があります。私も今まで勉強をしてきました。
しかし、これには前提があります。
野菜の栄養価が高くなければならないのです。
だけど、野菜に含まれる栄養素は昔に比べて「かなり低い」のです。
信じられないかも知れませんが野菜の栄養素は戦後まもない頃の方がビタミンやミネラルの含有量は多いのです。
私が子供だった頃、レンコンは粘り気があり、ホウレンソウの根っこは赤かったです。野菜に苦みがありました。ゆえに野菜嫌いな子供が多かった。
今の野菜は食べやすさを優先しています。だけど、栄養素がそぎ落とされているのです。
和食でアレルゲンを除去してもアトピーには有用性は低い
なぜ、野菜の栄養素は低下したのでしょうか?
昭和30年代以降、土建国家優先の日本では塩田は石油コンビナートに置き換えられ、塩は工場でつくられるようになりました。
護岸工事で河川はコンクリートで固められました。
よって、山の土壌からミネラルが河川に滲み出なくなった。よって田畑にミネラルが浸透しなくなったからです。
また、旬を無視したハウス栽培、促成栽培、何年も耕作されたことで疲弊した土壌で育った野菜にはアトピーを治す力が乏しい。
もちろん、油脂や砂糖、肉食の過剰摂取は良くない。やはり和食の献立は素晴らしい。
でも、野菜に自然治癒力を高めるほどの力がなければ、いくら油脂を減らしても、期待したほどの効果はないでしょう。
ゆえに、私は和食だけで治すことには懐疑的なのです。
私に相談される方の多くは和食にされています。しかしみなさん努力が報われていないのです。
さらに日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2016年版)」151ページでは、食事に関してこのように説明されています。
CQ15.アトピー性皮膚炎の治療にアレルゲン除去食は有用か.
食物アレルギーの関与が明らかでない小児および成人のアトピー性皮膚炎の治療にアレルゲン除去食は有用でない.
ただし,食物アレルギーが皮疹の憎悪に強く関与すると考えられるアトピー性皮膚炎においては,原因となるアレルゲン除去食は効果があるが,ステロイド外用剤による一般的な抗炎症外用療法を十分に行うことが前提となる。
つまり、食物アレルギーでない限り、アトピー性皮膚炎においてアレルゲン食品(アレルギーの原因になる食品)を除去しても治療に有用ではないですよ、ということです。
アトピーはアレルギーとは違います。
ゆえに、アトピーはアレルゲンを除去しても治るとは限らないのです。
あなたが食べたいものを頑張っても「なかなか完治のきざしが見えない」のはそれが理由です。
「病気治しは何かを省く(除去)こと」は食養生の基本です。
しかしこの基本理念が発揮できたのは、野菜に人を癒す力があった時代だからこそ通用したのです。
さらに、ステロイドを長期間にわたって塗り続けながら和食に変えても私は意味がないと思います。
副作用の懸念を放置しながら食事改善をしても効果は相殺されると思うからです。
ステロイドの副作用については次のページ→アトピーにステロイドが効かない明確な理由とは?をお読みください。
では、食事についてどうすればいいのでしょうか?
あくまでも、「成人として」「アトピーとして」の食事をすれば良いのです。
そう考えれば我慢を強いる食生活にはならないはずです。
具体的には⇒大人のアトピーを食事で改善する方法とは?何を食べると良いのか? をお読みください。
文責/NPO法人日本成人病予防協会会員 渡辺勲