最近、ステロイドを塗っても「炎症が消えない」「効き目が悪い」と感じていませんか?
それはステロイドは塗り続けると「効果よりも副作用が大きくなる」からです。
ではどういう副作用が「効き目を悪くさせる」のでしょうか?
たとえば皮膚萎縮(皮膚が薄くなること)という副作用があげられます。
皮膚萎縮とは角質層(表皮)が薄くなることです。
角質層が薄くなると皮膚バリアが喪失するので水分を保持する力が低下します。
よって肌からの水分蒸発がすすみ乾燥が激しくなります。
乾燥は肌の痒みを悪化させます。掻き壊しも増えるでしょう。
つまり、ステロイドの副作用によってアトピーの治りが遅くなるので「薬が効かなくなった」と感じるようになるのです。
また、副作用ではありませんが、ステロイドの長期使用によって効果が低減するのです。
実際、以前のように効かないので強いタイプのステロイド剤を塗っても「アトピーが治らない」と悩む方は多いです。
それはなぜでしょうか?
塗り続けることでステロイドの薬効成分を受け止める受容体(レセプター)が皮膚からなくなるからです。
なので、ステロイドを塗っても効かないようになるのです。
今まで述べてきた状態は薬を長い期間使用することで起きます(後ほど詳しく解説します)。
では、「期間を空けて使えば大丈夫なのか?」という疑問があるかと思いますので、次の章から説明しましょう。
塗る回数を少なく、期間を短くしても副作用の恐れが
顔が赤くなるたびに、腕の関節に発疹がでるたびに、ステロイドを塗る方がいます。
「たまに使うなら良いのでは?」とお考えなのでしょう。
ですが、安心とは言い切れないのです。
海外の学会研究では「1回のステロイド剤の塗布でも、ステロイドは2週間も皮膚の角質層に残留する」ことがわかっているのです。
1回塗ってから2週間たっても「ステロイドによる血管収縮作用がみられた」ことから、ステロイドは肌に蓄積されることがわかったのです。
さらに、残留したものが体外に排出されるまで、何年もかかるのです。
そして次に、皮膚バリアの低下の懸念があります。
2009年の皮膚科学教授コーク医師の論文によれば「強いステロイドなら3日、弱いものでも6週間使い続けると、皮膚バリア機能が低下する」となっています。
皮膚バリア機能が低下すれば、
1.外部環境からの刺激を受けやすくなりかゆくなる。
2.細菌やブドウ球菌の繁殖をゆるし、
3.水分蒸発が激しくなって乾燥肌が促進します。
結果としてステロイドを塗っても効かない状態になる恐れがあります。
ですから、くれぐれも家にステロイドがまだ残っているからといって、ダラダラ塗るのは避けましょう。
「塗る回数が少ない。使用期間が短いから大丈夫だ」という判断はステロイド使用の長期化をもたらすので要注意です。
使用の長期化は副作用の懸念が増大するからです。
必ず皮膚科医師が指示した塗る回数と量と期間を守ることです。
「皮膚萎縮」によって乾燥肌になり、やがて薬が効かなくなる
ステロイドは長く塗ることで効果は低減します。
ステロイド軟膏の薬効が発揮するのは、その薬の効果を受け止める受容体(レセプター)が皮膚にあるからです。
その受容体はステロイドを塗り続けることで消えていくことがわかっています。
ですから「最近、ステロイドをいくら塗っても効かなくなった」と感じてしまう。
弱い薬が効かなくなり次第に強い薬を使うようになる。塗る量も増えていく。
ついには薬をやめることができないことも考えられます。
さらに、注意したいのが副作用「皮膚萎縮」があります。
日本皮膚科学会「診療ガイドライン」においても副作用として「皮膚萎縮」が明記されています。
局所的副作用については、皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド潮紅、多毛、皮膚萎縮線条、細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症の悪化などが時に生じるが、皮膚萎縮線条を除いて多くは中止あるいは適切な処置により軽快する。
皮膚萎縮とは皮膚が薄くなることを意味します。
ここで大事なことをお伝えします。
前述の通り、皮膚萎縮は肌の乾燥をもたらし肌の乾燥こそが「新たな痒み」を起こしていくのです。
なぜならば、肌が乾燥すると痒みを感知する神経線維が皮膚表面に露出しやすくなるからです(下図参照)。

痒みを感知する神経線維が乾燥肌になると肌の表面まで伸びやすくなります。
よって、少しの外部刺激にも敏感になり痒みを感じやすくなるのです。
まとめますと、
薬の副作用(皮膚が薄くなる)によって痒みが起きやすくなり、いくら薬を塗っても追いつかない可能性がある
このことは忘れないでください。
またさらに、診療ガイドラインにも指摘されている「細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症の悪化」にも気をつけたいです。
ステロイドとは免疫抑制剤です。
免疫を抑制する作用があるため塗り続けることで免疫力が低下します。
よって、皮膚の菌感染に弱くなり治りにくい状態になる可能性があるといえます。
ここまでで「ステロイドの副作用」や「長期使用による薬効の低減」等によって効かなくなる原因を説明しました。
ステロイドによるアトピーの解決には限界があることが理解できたかと思います。
もちろん応急的にステロイドを塗る必要はあります。
しかしそれと「これからもステロイドを塗り続ける」は別の問題だと思いませんか?
ここまで読まれたあなたは「ステロイドをこれからも塗り続けることが根本的解決になるかどうか?」一度、考え直すべきでしょう。
かつて、26歳の時にアトピーで入院。退院してからステロイドを10年も顔に塗り続けている男性のご相談に乗りました。
炎症がでるたびにステロイドを塗る。これを10年も繰り返してこられました。
ステロイドを塗りたくないけど、塗っても炎症が出る肌を見てはステロイドを塗る。
ステロイドが手放せなくなってしまったそうです。
免疫抑制剤であるステロイドは炎症を鎮静化して抑制する絶大な効果があります。
しかし、一方で、薬である以上、副作用もあるのです。
ですから連続してステロイドを塗ることを禁止する規定(連用使用の禁止)があるわけです。
ですから何十年もステロイドを塗っているのなら見直すべきではないでしょうか?
下の写真はアトピーで苦しんでいたころの私です。

私は中学1年生からアトピーが悪化。以来、約25年以上はずっとアトピーに苦しみました。途中で3回の激悪化を経験したのです。
しかし今ではこんなにきれいになりました。

ステロイドを塗っても治らず保湿を一切やらない療法を試しましたが辛さが増えただけでした。
結局、私は薬を一切使わないで、最後はアトピーを完治できました。
されど私は薬を否定はしません。
ただ、アトピーを治すならば医師任せ・薬任せ「だけ」では難しいと痛感しています。
薬を手放してすっきり治すためには私たちが「この対策は根本解決に役立つのか?」「その場しのぎの解決方法ばかりやっていないか?」を判断する必要があります。
その違いを見極める方法について次のページアトピーの原因と克服のメカニズムを用意していますので、ぜひお読みください。
文責/ NPO法人日本成人病予防協会会員 健康管理士 渡辺勲