息子さん娘さんがアトピーの親御さんへのアドバイスです。
やってはいけないこと、いってはいけないこと、たくさんあるのです。
これから書く文章は私が14年間、アトピーの息子さん娘さんとの面談を通じてお聴きした話を再構成したものです。特定の人物を述べたものではございません。
言い知れぬアトピーを抱えることの鬱積
「どうしたのだろう? 最近、ふさぎこんで……」
「なにもいわないから、どうすればいいかわからない」
アトピーで悩む息子さん、娘さんを見てこのように思うお父さん、お母さんは多いと思います。
自分はアトピーになったことがないから、余計に心を閉ざして何かにじっと耐えている子どもの気持ちがわからないし、どういった言葉をかけていいかわからないケースも多いでしょう。
アトピーは病院に行けば治る病気であればいいのですが、難治化することが珍しくありません。
ゆえに、アトピー患者というのは、じんわりと不安を抱えてしまいがちなのです。
でも、皮膚科に行くしかない。しかしながら、皮膚科へ行けばただステロイドを渡されるだけ。ステロイドを塗って治らないことを知っているだけにうんざりしてしまう。
ならばと漢方薬を試しても治らない。皮膚科や漢方クリニックに通院することに意味を見いだせなくなる。
もう誰も信じられない。
「アトピーはアトピーになったことがない者に辛さはわからない」とばかりに、もう誰にも関わってほしくないとさえ思う、これが患者たちの本音なのです。
なにも拗ねているわけでもないのです。ただもう「どうすることもできない」のです。
ただ苦しい時間を耐えるしかないのです。
アトピーで苦しむ方は黙りこくってじっと動かないでいるように見えるかも知れません。
それでも、頭の中で様々な言葉が交錯しているのです。
「この辛さは誰にも理解されないだろう」
「このままの状態では、これからの生活は大変だろう」
「もう、何もしたくない。投げ出したいよ」
アトピーではない人からすれば、愚痴を弱音を吐いていると思われるかも知れない。言い訳ばかり言っているように聞こえるかも知れない。
時には「こんな身体に生んで!」と親からすれば聞くに堪えない言葉を時々いうかも知れない。
でもこんな「言葉」生まれて初めて言ったよ。わたし、俺の人生には反抗期がなかったもんね。
なのに、言葉すらも抑えられてしまったら最後、わたし、俺はどこに「切なさ」を「やるせなさ」を吐露できるんだ……?
そうやって、本人はひとり部屋に閉じこもって鬱積を抱えているかも知れない。
しかしお母さんはこういうんだ。
「肉を避けているけど、肉を食べないと元気でないよ」
「嫌がるんじゃなくて少しは食べたらどうだい」
「油ものを食べないとよけいに肌が乾燥するわよ」
「野菜ばかりじゃ栄養つかないわよ」
お父さんの方を見る。いつも、お父さんは黙っていて、お母さんに任せっきりだ。
たまにお父さんが口を開けば「せっかくお母さんがつくったんだから。意地をはらないで食べたらどうだい」
「そうよ、この子、最近、意地ばっかりはってるんだから。あはは」
食事はアトピーで苦しむ人生の中で数少ない楽しみのひとつだ。
だけど、その食卓が苦痛でたまらない。
私は、そんな言葉にしづらい陰鬱をゆっくりと、たどたどしく語る「わたし」「俺」に出会ってきました。
「もう頑張れないよ。なのに……アトピーの治し方の話題ばっかもってくるよ」
「なにか始めると『あなたアトピーでしょ?』って制されるよ」
「そんなに心配ばかりされてもね。じゃあ何をすれば安心するのさ」
これからも自分の想いや願望は抑えないといけないんだろうか。
親ですら俺や私の気持ちを聞いてくれない……アトピーばっかだよ……と思う人もいる。
いっぽうで「親に迷惑をかけてしまっている」と自分を過酷に責めるアトピーの彼、彼女もいる。
だからこそ、投げてはいけない言葉がある
言葉で表現しずらい辛い想いを抱えているアトピーの息子さん娘さんたちのことを書いてきました。
そんな、お子さんに親が言ってはいけない言葉がある。
それが、「そんなに辛ければ、薬、塗っときな」
だって、感情は薬で埋め合わすことはできないから。
モノでは心を癒すことができないから。
心を薬(モノ)で解決はできないから。
親御さんのあなたへ。
お気持ちはわかりますが、お子さんのアトピーが治らないことに焦ってはいけませんよ。
焦らないでくださいね。
そこで、アトピーのお子さんに言ってはいけない2つめの言葉を最後にあげておきます。
「言いたいことがあれば言えばいいじゃない」
アトピー解放心理セラピスト
NPO法人日本成人病予防協会会員 渡辺勲
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