アトピーを理由に休むことはダメなことなのか?

アトピー発症を理由にして仕事や家事などを休むことは、まったくかまいません。

むしろ、アトピー回復のために身体を休ませることは不可欠です。

仕事や家事などを休んで、病気治癒に専念することは、自分の役割や義務を放棄するように思えるかもしれません。

自分の役割をこなせないことで、罪悪感を覚えるかもしれません。

しかしそうは言っても、アトピーというのは難病です。

アトピーが悪化してしまうと、寝込んでしまうのは珍しくありません。

身体がけだるくなりますし、身体が火照り、皮膚が固くなって動かしくにくくなります。とても普段と同じ活動をすることは出来なくなります。

現在、そういう状態にまで至っていないのでしたら、これ以上の悪化を予防するために今からでも休むことです。

私は今まで、多くのアトピーで悩んでいる方のご相談に応じてきました。

アトピーで大変な状態であっても「仕事を休んだら張り合いがなくなる」という理由で、会社勤務を続けている方もおられます。

あるいは「アトピーで仕事を退職して、実家に戻るかどうか悩んでいる」と、家族に依存することにためらいを感じる方もおられました。

または「母親」「妻」「娘」という役割をこなしている方もおられました。お嬢さんもアトピーで看護が必要で、家族のために家事全般をこなし、お母さんと同居しているので娘として良き妻であることを求められていました。

それでもご本人さんのアトピーは寸暇を惜しんで寝込んでしまうとても重篤なのです。

おおむね皆さんは休むことに躊躇する方が多かったです。

あるいは家族や親にアトピーがどんどん広がっていくことを言えない中学生のお子さんや、高校生の方も少なくありません。理由は「アトピーであることを言うと迷惑をかけるから」でした。

自分という存在は、他人の期待と要求に応えてこそ成り立つのだという考えが強いように思えます。

他人の期待と要求、あるいは他人がもっている自分へのイメージを裏切りたくない想いが強いと、アトピーを理由にして自分の役割を降りるのは躊躇して当然でしょう。

あるいは、世間ではまだまだアトピーは「薬を塗れば治る」というその程度の関心しかなかったりします。

そうであるならばアトピーを理由に「役割」をいったん辞めると、どうして薬を塗って治療しないの? と言い返されるように思える。ならば言わないでおこうと。

またアトピーであることを告げると、アトピーに関してあれこれお節介に「アドバイス」されるのは、本当に嫌なものです。そっとしておいて欲しいですよね。

それだから、自分がアトピーであることを言いたくないお気持ちは、よくわかります。

アトピーは心身に関わる実存的なことです。それは他人が思うよりもずっとセンシティブで繊細な領域です。

だから、そっと何も言わないで欲しいものです。かまって欲しくないものです。しかし理解はしてもらいたい。そういうもどかしさを私たちは感じます。

しかしながら、アトピーと言うのはほんとうに悪化すると、何も出来なくなりベットでダウンしてしまいます。仕事も家事も勉強も出来なくなるのが自然です。

いくら薬を塗っても、何も出来なくなる時間を過ごすことになります。

ですから、今は何も出来ない状態であり、アトピーというのはそれくらい難病なのであって、理解してくださいと周囲に伝えることは、まったくかまわないのです。

もしくは周囲に理解されないのではと考えが頭によぎるかもしれません。

しかしながら、アトピーはそういった考えを乗り越えて、大変に苦しいものです。それゆえに、もう何も出来なくさせてしまうのがアトピーなのです。

また、だからといって何も出来なくなることで自分の価値がなくなるとは思わないでください。

頑張っている時だけが自分の価値を感じられるという想いは、この際、見直してもいいでしょう。

どんな人でも頑張れない時は必ずあるものです。

人は病気になる自由さえあるのです。病気を回復する機会をもつのは人が自然にもつ権利です。

他人の期待と要求にこたえている時だけが「私」ではありません。

もしそうだとしたら、他人のために生きていることになります。その人生は他人のものになります。

病気は苦しいものです。しかし病気は自分に還ることが出来る機会なのかもしれません。

また回復してみんなに会えばいいのですから。