アトピーへの誤解のひとつ「脱ステ」
アトピーを治すために、これまで受けていた治療を否定して正反対のことをされる方がおられます。
この治療がダメなのだから、その正反対のことをしようと決断されて実行されるのでしょうか、そのケースのひとつが「脱ステ」です。
しかしながら、脱ステロイドをすると治ると誤解をされていられる方が多いのが気になります。
脱ステをしてもアトピーは治るわけでもないのです。ましてや脱ステによるリバウンドで塗炭の苦しみに呻吟することになりかねません。
脱ステによるリバウンドとは?
塗り続けていたステロイドを急にやめるとリバウンドによる症状のぶりかえしによる悪化を招く恐れがあります。
この断薬による悪化の原因を「ステロイドの毒素が出るからだ」と考えている方がおられます。これは間違いであって大変な誤解をされています。
ステロイドを止めることで症状が悪化するのは薬の毒素が皮膚に排泄されているからではありません。
ただ、今までステロイドで抑えていた皮膚炎が再発しているに過ぎないのです。
アトピーによる皮膚炎や痒みがステロイドの効用で抑制されていたのですが、急な断薬によって症状の抑えが効かなくなってアトピーが激しく発症します。
このままステロイドを塗るのを止める、つまり脱ステを継続するとどうなるでしょうか?
ただただ、アトピーが発症し続けることでしょう。
よって、脱ステロイドがアトピー治癒に至るわけではありません。
そもそもステロイドとは?
ステロイドを止めるとアトピーが治ると考える方は、そもそもステロイドを塗る意味をご存じないのではないでしょうか?
ステロイドとは抗炎症剤であり免疫抑制剤です。
西洋医学ではアトピー性皮膚炎をこのように考え、ステロイド塗布が薦められます。
皮膚の炎症は免疫の働きが過剰になっているからであって、免疫の働きを抑制することで皮膚炎は緩和するはずである。
ステロイド剤を塗る目的とは、ステロイドによる免疫を抑制する効力でもって皮膚炎を消去することにある。
ステロイドは諸刃の剣です。炎症を抑える効力は絶大です。しかしながら長く塗ることによる副作用も大きい。
その副作用を避けるためにステロイドを経つ気持ちは理解できますが、急に止めることはしないでください。
ステロイドを止めることで大きなリバウンドを招くことになるからでして、患者の独自な判断で脱ステロイドを行うのは避けましょう。医師の指導の下で断薬は行われるべきです。
実録・脱ステロイドの苦しみ
私はある相談者様から以下の話を伺ったことがあります。
脱ステロイドを希望する患者の入院を受け入れている病院での話です。
ステロイドを断ち切ることによって生じる「身体の奥底から湧き上がる痒み」に耐えられなくなった患者たちが病室のガラスを破りまくるそうです。
医師が夜通し、ガラスを壊そうとする患者たちを後ろから羽交い絞めにして止めるのだそうです。
ガラスが破られる音と、医師が必死になってとめる姿、それも毎夜毎夜繰り返される。
ガラスを破壊せずにはいられないほどの痒みに苦しむ入院患者がおられる……ステロイドを止めることに、それほどの苦しみがあることを知った私の心は悲しみに沁みました。
どうか無計画にステロイドを塗り続ける、依存し続けることに留意して頂きたいです。
そしてステロイドを長期連用使用することで断薬は困難になることを覚えていてください。
文責/NPO法人日本成人病予防協会会員 健康管理士 渡辺勲
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