アトピー性皮膚炎を治して、仕事に復帰後、再発してしまって皮膚科を受診することになった方がおられます。
また、結婚してからの舅姑・親戚との付き合いや、夫婦生活での悩みが増えてアトピーが久しぶりに悪化した女性も多いです。
よくお話を聞くと仕事や職場・家族における人間関係での精神的なストレスがきっかけになったといわれるのです。
アトピーの原因のひとつにストレスがあると、よくいわれます。
ストレスや緊張を感じると顔が火照って赤くなる方も多いでしょう。
では、ストレスを感じるとなぜアトピー性皮膚炎を発症させてしまうのでしょうか?
ストレスが常態化すると皮膚細胞にダメージが
人間が環境から受ける刺激にどう対応するかは原始時代の頃と変わっていません。
かつての古代の人類は恐竜のような巨大な動物に出会った時、強烈な危機とストレスを感じて、「闘う」もしくは「逃走する」の判断を迫られるわけですが、
この仕組みが現代人でも身体内で起きているわけです。
身体は強いストレスを感じると「闘う」「逃げる」といった指示を全身に伝えるために脳からアドレナリンという神経伝達物質がでます。
すると危機回避を担当する臓器や筋肉への血流が増加します。エネルギー源である酸素とブドウ糖を供給するためです。
そうしますと、血流が不足した他の身体の部位がエネルギー不足になります。
皮膚細胞はストレスや緊張に対応するために必要ではありませんから、皮膚はエネルギー不足になり傷つき、これが症状の発生をまねきます。
一時的なストレスならば問題はありません。
しかし、強いストレスが常態化し長時間にわたって感じるようになると皮膚や腸の粘膜もダメージを受けます。
このようにしてストレスは皮膚のトラブルを引き起こすのです。
なぜ職場から家に帰ると急に痒くなるのか? それはストレスが緩和すると痒くなるから
「職場では痒くないのに家に帰ると急に痒みを感じて掻きむしってしまう」
そんな経験はありませんか? この原因のひとつをお伝えしましょう。
職場で強いストレスを感じ続けて、家に帰って玄関でほっと落ち着いた時、
アドレナリンによって抑えられていたマスト細胞が反発してヒスタミンを放出します。
マスト細胞とはその膨らんだ形から肥満細胞ともいわれ、痒みの原因物質ヒスタミンを多く含んでいます。
そしてさらに、ストレスと緊張の中で損傷していた細胞膜からアラキドン酸が放出されます。
そしてさらに、ロイコトリエン・プロスタグランディンが産生されアレルギー反応のような事象が発生するのです。
ストレスが長く続き、それがふっと緩和した時に、痒みが起きてしまうのです。
また、痒みだけではなく、赤い発疹など皮膚の炎症があらわれてきます。
これがストレスがアトピー性皮膚炎発症に関与する仕組みです。
ストレスから緩和されると滞留していた血液が再び流れ出します(再灌流)。
この時、細胞膜を酸化させる大量の活性酸素が発生することもわかっています。
なお、かゆみ止めの抗ヒスタミン剤はヒスタミンしか対応していません。痒みの原因となる全ての物質を抑えることができません。
よって、抗ヒスタミン剤の効果は限定的であり、飲んでも効かないと感じられるわけです。
ストレスによるアトピー性皮膚炎にどう対応するべきか?
ストレスとアトピーの関係について、これまで述べてきました。
では、このストレスにどう対応すればいいか? について解説します。
ステロイドではストレス起因の皮膚炎を克服することはできない
現在、代表する治療方法はステロイド治療です。
ステロイドは炎症の原因と考えられる免疫を抑制することで、炎症を鎮静化させようというのが目的です。
ですからステロイド外用剤を塗ると一時的に炎症は軽くなります。
しかし、過剰なストレスから解放された時に、マスト細胞から放出されるヒスタミンをステロイドは抑えることはできません。
損傷した細胞から産生される「痒みを起こす物質」を除去できません。
このようにステロイドは身体内部から生まれるアトピーの原因を緩和しません。
職場や家族との人間関係や慣れない仕事によるストレスの弊害に対して、ステロイド塗布は対症療法に過ぎないといえるでしょう。
ステロイドの副作用には様々あります。詳しくはなぜステロイドを塗っても痒みが治らないのか?をお読みください。
十分な睡眠と休養によって皮膚の再生を目指す
「病気治しは少食にしてよく寝るに限る」と古来よりいわれています。
早く寝て、適度な運動をして、たまには仕事から離れて自然に身をゆだねる時間をつくってください。
家に帰っても仕事のことを考えずに自分のための休息の時間を過ごすことです。
職場や家族での人間関係でもコミュニケーションを増やして闊達な関係をつくっていくことを心掛けることです。
しかし、あなたはこのように考えているかも知れません。
「ストレスだけがアトピーの原因なのか?」
「仕事を辞めて家で休息しても症状は治らず悪化したけど」
その通りです。
そう想うのは自然です。では続きを読んでください。
ストレスを減らしてもアトピーが治らない場合、どう考えると良いか?
アトピー患者の中には、
「瞑想やヨガをやっても効果がなかった」
「運動をしたりして気分転換に努めたが治らない」
と嘆く方は多いです。
さらに、多くの患者がこう証言します。
「仕事を辞めて自宅療養に専念しても治らなかった」
実は私もそうでした。会社を退職して自宅療養というノーストレス状態でしたが、むしろ悪化したのです。
食事に気をつけて栄養も摂取していたのですが、職場復帰は困難でした。
自宅で静養していてもアトピーが治らない。そんな悩みを漢方薬を処方してくれていた薬剤師に相談しました。
すると、「定年退職をした人がぽっくり死んでしまうことがあるけど、それと同じではないですか」と笑いながらいわれた記憶があります。
さらにいえば、
現代社会においてストレスを感じていない会社員はいないわけです。
ですが、会社員のすべてがアトピーになってはいない。
むしろ、バリバリ働いても、とても元気で快活な人もいます。
結婚や転職で人間関係が変化したとして、すべての人が皮膚疾患を発症しているでしょうか?
決してそうではありませんよね。
もっといえばストレスと無縁でもアトピーがでる場合もあるのです。
つまりこういうことです。
ストレスは皮膚炎発症のきっかけになりましょう。ですが、
過度のストレスや緊張はあくまでも表層的な要因であって、根源的な原因ではないのです。
そもそも、人間関係の心労や仕事の疲労を避けることができるのは「墓場」だけしかありません。
ひとりで家にいても、足元からはい上がってくるような孤独や不安を感じるわけです。
孤独や不安がアトピーである自分を情けなく思わせ、社会復帰を遅らせかねません。
温泉療法を一か月間、自然豊かな地方で長期の療養をして会社に戻ると再発してしまった。このような人は珍しくありません。
ストレスが皮膚に良くないのは事実です。
働き過ぎよりも休息を選ぶことが良いに決まっています。
過労を感じていたら残業を切り上げ、早寝をすることをお薦めします。
しかしながら、こまめに休息をしたり、十分な睡眠を取っても治らないのでしたら、
「ストレスを避けることでアトピーを治す」ことをやっても治るとは限らないことを知っておいてください。
あなたはストレスを減らしても正常な皮膚の状態にならないとお悩みですか?
でしたら、ストレス回避という対症療法ではなくて、もっと根源的な原因にアプローチするべきなのです。
すぐに会社や家族の人間関係を変えることができない方、ストレスを減らすことができない立場の方にとって知るべき内容があります。
そのためにページを用意しましたので、次のリンクのページアトピーの原因と完治メカニズムを読んでください。
ちなみに性格は関係ありません。
文責/NPO法人 日本成人病予防協会会員 健康管理士 渡辺勲